AI研修の導入にあたって最も利用されている助成制度、人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」(中小企業は経費助成率75%)が、令和8年8月3日に改正されました。
結論から申し上げると、「ChatGPTの使い方」「汎用的なプロンプトの作り方」といった汎用型のAI研修は助成対象外となり、職務に直結した訓練だけが対象に残りました。改正を知らないまま従来型の研修で計画届を提出すると、不支給となるおそれがあります。本記事では、厚生労働省の公表資料に沿って変更点と実務上の対応を整理します。
変更点1: 「対象とならない訓練」の明確化
本コースのDX化・GX化に関する訓練について、以下の実施目的の訓練は助成対象外となりました。
- 職業または職務に「間接的に」必要となる知識・技能を習得させる内容のもの
- 職業・職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの
公表資料には具体例が明記されています。
助成対象外の例
- 生成AIを利用するための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練(特定の業務への具体的適用を伴わないため)
- DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ訓練
- 脱炭素の基本理念や国際情勢など、GXの一般論を学ぶ訓練
助成対象の例
- 生成AIを活用して商品提案書の構成案作成・文章生成・修正方法を学ぶ、営業担当者向けの訓練(具体的な業務に直結し、そのまま活用可能なため)
生成AI研修そのものが対象外になったのではありません。分かれ目は、研修の題材が自社の実際の業務になっているかどうかです。
変更点2: 受講者の選定も審査対象に
「訓練内容に沿って対象労働者を選定しているか」という観点も明記されました。資料の例では、自社のCO2排出量の算定手順を学ぶ訓練は、算定業務の担当者が受講するなら助成対象、同じ訓練でも人事や営業の従事者を対象とすると助成対象外とされています。
「全社員一律で同じAI研修を受講」という設計は、内容が適切でも受講者の選定で対象外となる可能性があります。
変更点3: eラーニングは同一労働者につき年度1回まで
本コースの助成対象となる受講回数は同一労働者につき年度3回まで(従来どおり)ですが、このうちeラーニングによる訓練は年度1回までに制限されました。令和8年8月3日以降に提出された計画届に基づく受講から算入されます。動画教材中心の研修を複数回実施する組み立ては成立しなくなり、実務演習型・集合型の研修が中心になっていきます。
発注前に確認すべき3点
研修の導入をご検討中の企業様は、計画届の提出前に次の3点をご確認ください。
- カリキュラムが自社の具体的な業務名で書かれているか。「プロンプト入門」のような汎用的な章立てのままの提案は、改正後は通らないおそれがあります
- 受講者は訓練内容に対応する担当者になっているか
- eラーニング偏重の見積りになっていないか
助成金は申請すれば必ず支給される制度ではなく、要件・審査があり、不支給となる場合もあります。また、申請書類の作成代行ができるのは社会保険労務士のみです。今回の変更には経過措置が設けられていますので、実際の手続きにあたっては最新の支給要領・パンフレットのご確認、または専門家へのご相談をお勧めします。本コース以外の公的制度もあわせて確認したい場合は、中小企業が使えるAI導入補助金・支援制度の探し方もご参照ください。
弊社の考え: 制度が「効果の出る研修」だけを残しにきた
弊社では以前より、「研修は入口にすぎず、業務への実装と定着が本体」と考え、研修とその後の実装支援を一体で設計してきました(制度の基本と「研修→自動化」の進め方はこちらの記事で解説しています)。今回の改正は、業務に直結しない研修には助成しないという形で、この方向性を制度側が明確にしたものと受け止めています。
弊社は、毎日決まった時刻に実行される自動処理90本を自社で運用しており、その実務をそのまま教材にした職務直結型のAI研修(営業・経理・現場など職種別)と、研修後の実装・定着支援をご提供しています。なお、本コースは令和8年度末(2027年3月末)で終了予定の時限措置です。改正後の制度に沿った研修設計をご検討の企業様は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
出典: 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正 令和8年8月3日からの変更点について」(LL080803開企01)
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf
※本記事は令和8年8月7日時点の公表情報に基づく一般的な解説であり、助成金の支給を保証するものではありません。
