「賃上げに使える補助金はないか」という相談で、まず候補になるのが厚生労働省の業務改善助成金です。この記事では、厚生労働省の業務改善助成金のページ、令和8年度のリーフレット(ご案内・一部変更のお知らせ)、令和8年度地域別最低賃金全国一覧をもとに、申請の条件と期限を整理しました(いずれも2026年10月24日に確認)。
最終更新日: 2026-10-24
制度のしくみ
事業場内最低賃金の引上げ計画と、設備投資などの計画を立てて申請し、交付決定を受けた後に計画どおり実施して報告すると、設備投資などにかかった費用の一部が支給されます。支給額は、設備投資などの費用に助成率をかけた額と助成上限額を比べて、安いほうです。
- 対象は中小企業・小規模事業者(大企業と密接な関係を持つ「みなし大企業」を除く)。
- 事業場内最低賃金が、令和8年度の地域別最低賃金未満であること。
- 引き上げる対象は、雇用保険の被保険者で、雇入れから6か月を過ぎた労働者です。従業員がいない場合は対象になりません。
- 申請は工場・事務所など、労働者がいる事業場ごとに行います。
申請期限が残っている都道府県(2026年10月24日時点)
令和8年度の申請期間は、2026年9月1日から「申請事業場の都道府県で適用される地域別最低賃金の発効日の前日」または「11月30日」のいずれか早い日までです。地域別最低賃金の発効日は都道府県で違い、東京・神奈川・大阪・愛知・北海道・福岡などは10月1日〜4日に発効しているため、令和8年度の申請受付は終わっています。
| 都道府県 | 地域別最低賃金の発効日 | 申請期限 |
|---|---|---|
| 鹿児島 | 2026年10月25日 | 2026年10月24日 |
| 青森 | 2026年10月29日 | 2026年10月28日 |
| 高知 | 2026年10月29日 | 2026年10月28日 |
| 山形 | 2026年10月30日 | 2026年10月29日 |
| 山梨 | 2026年11月1日 | 2026年10月31日 |
| 徳島 | 2026年11月1日 | 2026年10月31日 |
| 愛媛 | 2026年11月1日 | 2026年10月31日 |
| 大分 | 2026年11月1日 | 2026年10月31日 |
| 長崎 | 2026年11月2日 | 2026年11月1日 |
| 佐賀 | 2026年11月15日 | 2026年11月14日 |
| 京都 | 2026年11月16日 | 2026年11月15日 |
| 岩手 | 2026年12月1日 | 2026年11月30日 |
| 熊本 | 2026年12月1日 | 2026年11月30日 |
| 沖縄 | 2026年12月2日 | 2026年11月30日 |
発効日は厚生労働省の令和8年度地域別最低賃金全国一覧によります。賃金の引上げも、申請の後から発効日の前日までに行う必要があり、引上げ後に申請することはできません。複数回に分けた引上げも認められていません。
助成上限額
引上げ額のコースと、引き上げる労働者の人数で上限が決まります。10人以上の区分は、特例事業者が10人以上の賃金を引き上げる場合に限られます。
| コース(事業場内最低賃金の引上げ額) | 引き上げる労働者数 | 助成上限額(右記以外の事業者) | 助成上限額(事業場規模30人未満の事業者) |
|---|---|---|---|
| 50円コース(50円以上) | 1人 | 30万円 | 40万円 |
| 2〜3人 | 40万円 | 70万円 | |
| 4〜5人 | 70万円 | 70万円 | |
| 6〜7人 | 90万円 | 90万円 | |
| 8人以上 | 110万円 | 110万円 | |
| 10人以上(特例事業者) | 130万円 | 130万円 | |
| 70円コース(70円以上) | 1人 | 40万円 | 50万円 |
| 2〜3人 | 50万円 | 100万円 | |
| 4〜5人 | 130万円 | 130万円 | |
| 6〜7人 | 180万円 | 180万円 | |
| 8人以上 | 230万円 | 230万円 | |
| 10人以上(特例事業者) | 300万円 | 300万円 | |
| 90円コース(90円以上) | 1人 | 90万円 | 100万円 |
| 2〜3人 | 150万円 | 240万円 | |
| 4〜5人 | 270万円 | 270万円 | |
| 6〜7人 | 360万円 | 360万円 | |
| 8人以上 | 450万円 | 450万円 | |
| 10人以上(特例事業者) | 600万円 | 600万円 |
助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。
特例事業者とパソコンなどの扱い
| 特例の要件 | 受けられる拡大 |
|---|---|
| 賃金要件: 事業場内最低賃金が1,050円未満 | 助成上限額の拡大(10人以上の区分) |
| 物価高騰等要件: 原材料費の高騰などの外的要因で、申請前6か月平均の利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が前年同期より3%ポイント以上低下 | 助成上限額の拡大に加え、通常は対象外のパソコン・スマートフォン・タブレットなどの端末と周辺機器の新規導入も対象 |
対象経費は「生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等」で、厚生労働省は例としてPOSレジシステムの導入による在庫管理の短縮や、国家資格者による業務フローの見直し(コンサルティング)を挙げています。AIツールや業務システムの導入を考えている場合も、生産性向上との結び付きを計画で説明できるかが要点です。
申請から支給までの流れと期限
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 申請 | 交付申請書に賃金引上げ計画と設備投資等の計画を書いて提出。電子申請はJグランツ(GビズIDプライムが必要。令和8年度から都道府県ごとに申請フォームが分かれています)、紙の場合は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室) |
| 2. 交付決定 | 助成の対象は、これから実施する賃金引上げと設備投資など。交付決定を受けてから計画どおりに進める |
| 3. 実施 | 納品・支払い・賃金引上げ(就業規則などの改正)を、交付決定年度の1月31日までに終える。やむを得ない理由があれば、事前の申請で3月31日まで延長される場合がある |
| 4. 実績報告・支給申請 | 事業の結果を報告し、助成金が支給される |
問い合わせは業務改善助成金コールセンター(0120-366-440、平日9時〜17時)です。厚生労働省は、厚生労働省や労働局から委託を受けたと装って助成金の活用を勧誘する事業者がいると注意しており、労働局が特定の事業者に勧誘を委託することはないとしています。
自治体の上乗せ補助もある
業務改善助成金の交付を受けた企業に、自治体が上乗せする制度もあります。たとえば札幌市の「賃上げ応援補助金」は、業務改善助成金の交付額確定を受けた市内中小企業などに、1/5以内(上限120万円)を上乗せする制度として市の一覧に載っています。詳しくは札幌市の中小企業向け補助金2026にまとめました。ITツールの導入費用そのものを対象にする国の制度はデジタル化・AI導入補助金2026で解説しています。
よくある質問
業務改善助成金は、賃金を上げた後でも申請できますか?
令和8年度は、賃金の引上げは申請より後に行う必要があります。厚生労働省は、引上げ後の申請はできなくなったと案内しています。
申請期限を過ぎた都道府県では、もう使えませんか?
令和8年度の申請期間は、地域別最低賃金の発効日の前日か11月30日の早い方までです。期限を過ぎた都道府県では令和8年度の申請はできないため、次年度の公募内容を厚生労働省のページで確認してください。
パソコンやタブレットの購入は対象になりますか?
通常は対象外です。特例事業者のうち、利益率が前年同期より3%ポイント以上下がった「物価高騰等要件」に当てはまる場合に限り、新規導入が対象になります。